天気 :10日 曇り時々晴れ、11日 晴れ後曇り、12日 晴れ
メンバー:ボイジャー
行程 :10日 金木戸川新ゲートP6:30→(林道歩き)→小倉谷出合10:10→(ミニゴルジュ)→1400mテン場14:50
11日 1400mテン場7:10→(大ゴルジュ)→40m大滝11:50→(両門ノ滝)→2000mテンバ16:10
12日 2000mテン場5:10→笠ヶ岳9:10→(笠新道)→新穂高温泉16:30
2024年夏、久しぶりに(メンバーと私の2人だけですが)夏合宿、北アルプス双六谷水系の名渓小倉谷を遡行してきました。
プレ合宿を重ねたこともあって遡行は成功!3日間の沢登りも久しぶりでした。
(しかし久々の3級の沢は自分にとってしんどかった~!)
<山行記録>
夏合宿本番の時がやってきた。一番心配だったのは天気予報だったが嬉しくもこの合宿に合わせてベストな予報が重なった。
プレを粛々と頑張ったご褒美かもしれない。もし雨予報だったら相当落胆してたであろう....。
双六谷周辺も久しぶりで、前回打込谷を遡行した時以来である。
今回の小倉谷は打込谷よりワンランク上の沢で、詰め上がった先にあるのは飛騨の名峰笠ヶ岳である。
技術的に困難な箇所は少ないと言われているが、遡行グレードは3級上、プレを重ねてきたとはいえ遡行前まで緊張感が抜けなかった。
(正直に言えば、どこでも強気になれるくらいに登攀/ザイルワークを精進すべきといったところなのだろう...。)
深夜に東京を達ってから7時間近い運転を経て金木戸沢ゲート前に到着、自宅から飛騨はかなり遠方である。
絶対に成功させたい山行なので費用はかさむが今回は躊躇なく車2台を使ってのアプローチを選択した。
ちなみに以前打込谷を遡行した時よりも2km程手前に新しいゲートが設けられていた。
スタートからしばらくは登り基調の長い林道歩きである。
登山道と比較すれば林道一般的にはなだらかで歩行は楽に思えるのだが、実際重い荷物を背負って長距離を歩行すると、そのときの体力消耗は想像以上である...。
約3時間半のキツい林道歩きを経てようやく小倉谷出合に到着、林道歩きからはようやく解放されるものの、ここからが本当の3級上の沢登りとなる。
名峰笠ヶ岳に突き上がる沢を遡行する興奮とこの先待ち受ける困難の両方がこのとき交錯していた。
最初のポイントは金木戸川の渡渉であろう。
水量が多い場合はかなりの難所だが、この日は水量が少なくノーロープで簡単に渡渉可能できた。
が、しかし、ここでいきなり切なすぎるをミスをやらかしてロープに頼る羽目となってしまった...。
渡渉は全く普通にこなせたのだが、到達した対岸のポイントが小倉谷から少し下流でここから普通にへつってアプローチできると思いきや、
途中にある鋭角岩(上の写真右上の尖った岩)に水流が集中してて、岩には手掛かり足掛かりが無くおまけに川床がひどく滑っており、どうあがいてもへつって突破できなかった.....。
結局メンバーが投げ入れてくれたフローティングロープを掴んでようやく入渓といった、何とも情けない出だしになってしまった...。
最初からこんなんで大丈夫か?といった不安がよぎるが、ここでは落ち込んでもしょうがない。
山も仕事も、人生、気持ちの切り替えが何より重要である。
小倉谷に入ると巨岩のゴーロー歩きが続いた。巨岩はラバーシューズが概ねバッチリ効いて快適であった。
ちょうどこの時は昼頃だったが、夏山の定番というか山全体ガスに覆われはじめ、これ以降は完全な曇天となってしまった。
さらに進むと通称”ミニゴルジュ”となる。
水量が多い場合は難所だろうがこの日は水量少なく概ね水線上を進むことができた。
ミニゴルジュの中にある4m直瀑は直登不可能で、横のチムニーを「ショルダー」or「カム+ナッツでのA0突破」を登り上がらねばならない難所である。
セオリー通りショルダーで突破を試みることになり、私がメンバーの肩を借りて登攀にトライ、
少し滑ったが気合でふんばってテラスに登りあがることに成功した。
その後メンバーにはお助けロープを出してA0で登ってきてもらって今日の核心突破かと思いきや、この次が厄介であった...。
あとは隣の岩にへつって移動するだけだが、滑落リスクが拭えず一歩が踏み出せない...。
悩んだ挙句、テラスの少し上に支点がとれる木があったので、そこにロープをかけて懸垂の要領で無事やりすごせた。
実際にロープで超える時、弱点を突けばノーロープでも問題なさそうことが判ったが、沢登りで無理は絶対に禁物である。
命は金では買えない、石橋を棒でたたくスタイルで続けてなんぼであろう。
ミニゴルジュを抜けると左岸側によさげなテン場を発見、この日はここで活動終了とした。
中々良好なテン場で薪も大量、ご飯にお酒にまったりしつつ焚火に癒されつつこの日はいつになく熟睡することができた。
翌日は朝7時にスタート、事前の天気予報の通り青空の下での遡行開始となった。
沢登りにおいて青空は遡行者のモチベーションを大きく左右する重要なファクターといえよう。
すこし進んで本日の核心ポイントの1つ”大ゴルジュ”に突入、早速泳ぎを要する淵が現れた。
ここはへつり、泳ぎ、登攀といずれも厄介そうで気合を入れたが、いざトライしてみると意外とスムーズに突破することができた。
大ゴルジュの途中で沢が開け、豪快に水しぶきをあげる立派な支流30m滝が目に入った。
小倉谷を遡行しているんだなあと実感できる一瞬でもあった。
この30m滝の存在感は圧倒的で、振り返れば虹までできていた。
山行記録の素材に絶対使いたいと思い、似たような写真を無駄に撮りまくった。
支流30mのすぐ先が難所の残置シュリンゲ6m滝である。
ここで我々に先立って小倉谷を遡行しているパーティーがいることがわかり、ちょうど登攀中であった。
お話しすると東京の山岳会”ぶなの会”のパーティーで、活動中時々に交流していくことになる。
30分程待った後、いよいよ自分達の登攀である。ありがたくもメンバーがトップを譲ってくれた。
ここは残置シュリンゲを上手く使って下降とヘツリを行う必要があり、高を括っていたら予想以上に手こずって、
ここで恥ずかしくも2回ドボンしてしまった。(他のパーティーに見られてなくてよかった 笑)
ヘトヘトになりつつ3回目でようやく突破、その先、水を被りながらの6m滝登攀は技術的には簡単だが、
結構体力を消耗しており何が何でも3度目のドボンは避けたく、慎重にこなした。
次はメンバーのビレイである。滝上でのビレイがちょっと問題でセルフビレイを取れる支点が全く見つからなかった。
(先行パーティーがザイルワークに異常に時間を要していた理由は多分これだろう。こういった事態を考慮して沢にはカムを数本持参するのが良いのかもしれない。)
悩ましいが仕方なく登攀コースから角度が外れてしまう位置でのビレイする形とした。
そんな心配はさておき、メンバーはあっさりヘツリ~登攀をサクッとこなして、ようやく大ゴルジュの突破となった。
核心を超えてホッとした先にある端正な6m幅広滝の前で小休止した。
この後ここは水流に負けじと流れの中央を思いっきりつっきって突破した。
やがて沢床が美しいナメ状になって、少し進むと、遠目から見ても端正な小倉谷を象徴する40m大滝が姿を現した。
ここでの記念撮影はマストであろう。
手前の幅広滝で休憩をとったこともあって記念撮影を終えたら早々に先に進んでしまったが、ここではもう少しゆっくり過ごしても良かったかもしれない。
40m大滝の巻きは、滝の左壁を斜め上にトラバースするように登り上がっていくのが正解のルートである。
しかし最初に誤って、若干手前の笹薮の踏み跡みたいな部分からの巻きを選択すると、やがて強烈な急登&笹薮が続きあげく標高を上げてもトラバースが困難そうで、
結局下降、大幅体力消耗と30分以上の時間ロスになってしまった....。
この後正しい巻き道を進むと薮漕ぎは無かったが、多少強引に滑った岩の段を登攀していたら途中危うくなってしまい、結局セミになってしまった....。
痛恨のミス...、メンバーにお助けロープを出してもらって事なきを得たが、またまた切ない反省となった....。
大滝を越えたあたりで昨日と同様、稜線にガスが掛かって曇天へと変わってしまった。
天気は残念であるが、引き続き小倉谷の見所が続き、次は両門ノ滝30mである。
切なくも先ほどの大滝でスタミナを使い果たし、おまけに手前のゴーロで滑って脛を強打して悶えてしまい、
このあたりから歩行スピードが完全にカメさんになってしまった...。
両門ノ滝30mはセオリー通り巻きを選択したが、先ほどの失敗もあってここは慎重にルーファイを行った。
そのおかげもあってか今回はドンピシャで滝上の沢床に降り立つことに成功した。
そこで先を俯瞰すると天からそびえ落ちるような30m大滝が目に入った。素晴らしい風景である。
しかしこの時「今日これからこの高さまで登りあがるのか....」といった絶望感が正直圧倒的に勝っていた。それ程にバテバテであった...。
この滝も巻きとなる。こちらは素直に左側の樹林帯を利用することで簡単に超えることができた。
しんどい大滝の巻きをこなした後はテン場までゴーロー歩きである。
時刻は午後4時、遡行図記載のテン場ポイントはもう少し上流だが、この日はぶなの会チームが先行しており、
聞けばもう1パーティー(トマの風チーム?)が先行しているとの情報を得ていたので、メンバーが見つけたナメ滝上の小さな右岸テラスで幕営することにした。
寝床はかなり硬いが寝られるだけマシである。
この辺りは標高2000m程で大きな樹木は無く薪集めに苦労し、おまけに薪の多くは湿っていた。
湿った薪で焚火をする場合、大量の着火剤を投入した後、1時間以上かけて火がメインの薪にしっかり着火するまで根気強く火種を育てる必要があるのだが、
この日はすっかりバテバテですぐに横になりたい気持ちが勝って、がんばって薪は集めたが結局焚火は早々にあきらめる形とした...。
翌朝は3時半起床、夜は大分冷え込んで気温も低く、焚火も無いので、濡れた沢服に着替えるのがしんどかった。
いよいよ今日は稜線に登りあがって笠ヶ岳に登頂する日である。
昨日相当疲れていた為か疲れが殆ど回復できておらず、初っ端から体力的にキツい時間が始まった。
途中10m程の切り立ったな滝があり先行パーティーが右から巻いていたが、ロープを出してもよさそうな厄介巻き道に見受けられた。
ここでメンバーが滝の直登にトライ、絶妙なバランスで見事に突破してくれた!
ナイスルーファイである。私も続いて登ってみると多少テクニカルだが所々ガバホールドになっており、
万が一のスリップを考慮してお助けロープも出してくれて、おかげで安全スムーズに突破することができた。
一方登攀後、私の為に出してくれたロープ(正しくはフローティングロープ)が下の岩にガッツリ挟まってしまった...。
ここで私が高校の物理学の教科書に載っているロープで波をつくる動きをやりまくったら、幸いロープが岩から外れてくれて、なんとか無事回収に至れた...。
(ほんの少しだけお役に立ててよかった...。)
沢は次第に水が減っていき、やがてガレ沢となって、それに入れ替わるようにウサギギクやハクサンフウロといった高山植物もお出ますようになり、
後ろを振り返ると雲海が広がっていた。
写真を見ると夏山の癒しの景色の中での登山に映るが、実際この時はスタミナ切れでかなりキツく、
いつにないスローなカメさん登高で粛々と一歩一歩稜線を目指していくのが精いっぱいであった。
今自宅で記録を作成している中、次回は体力回復のドーピング(アミノバイタルとかサプリとか?)を携帯しようかと思っている。
朝方稜線をガッツリ覆っていた雲も自分達のペースに合わせるように少しずつ上昇してくれて、おかげで最高のタイミングで稜線に立つことができた。
(写真 稜線まであと20mくらいのところでの1枚、最後のほうは1に体力、2に体力、3に体力な感じでした...。)
正面には少し霞んでいるものの豪快な穂高連峰の稜線を俯瞰することができた。
大キレット、北穂、奥穂、滝谷、西穂に続く縦走路、気づけば穂高はかれこれ十年近くご無沙汰である。
ようやくクリア谷登山道にようやく合流、ここでやっと緊張の紐を解くことができた...。
あともう少しだけ登れば晴れの笠ヶ岳山頂が待っている...!
8月12日午前10時、笠ヶ岳山頂到着!やり切った!
勿論完全燃焼、半端ない達成感!
ちょうどぶなの会メンバーも山頂におり、お互いの健闘を称えあった。
山頂を後にしたところで打込谷を遡行してきたパーティーとも出合い、彼らともお互いの成功を称えあった。
遡行成功の余韻に浸りつつ長く休憩したいいところだが、この後にとても長くしんどい下山が控えている...。
夏合宿プレの万太郎谷では下山に苦しみ、過去に打込谷を遡行した時、昔両親と笠ヶ岳に登った時、いずれも笠新道で苦しんだ過去がある。
後ろを振り返れば笠ヶ岳の端正な雄姿が目を引く。
どこで振り返っても似たような構図になってしまうが全く飽きることなく写真をガンガン撮りまくった。
(写真:稜線から望む夏の笠ヶ岳、標高2500メートルを超えの稜線に立って初めて拝める景色である。)
途中抜戸岳にも立ち寄った。以前山ボードで穴毛谷~八ノ沢詰め上がった際、最後の稜線の雪庇の突破に苦労したことを思い出した。
このとき自分はすっかりスタミナ切れの身であったが、一方メンバーは体調絶好調でこのまま鏡平経由で縦走してもいいくらいとのこと、すごい体力、流石です...。
杓子平に降り立って抜戸岳方面を望む。ガスですっかり曇天だがそれでも素晴らしい景色である。
最後の笠新道はスタミナ切れに加えて靴擦れも起こしてしまい中々苦しかった...。
タビ型の沢靴下1枚だとアプローチシューズ(ハイキング靴)に遊びができて以前から足にかかる負担が大きい感があった。
日帰りや1泊2日の登山では何となくごまかせたが、2泊3日以上でおまけに標高差1500mの山行ではごまかせないといったところだった...。
(後日、メリノウール+3シーズン用靴下の二枚重ねで足の疲労/ダメージを回避できることにようやくですが気づきました...。)
かなり時間をかけて、ヘトヘトになって新穂高温泉に無事下山、ブナの会メンバーに挨拶をした後、車の回収に向かった。
折角飛騨まで来たので予備日1日を使って翌日は観光を楽しみたかったが、お盆で周辺の民宿は軒並み満室、
平湯の温泉でサッパリし、梓川村のテンホウで締めた後、長いドライブを経て帰京した。
久々の夏合宿であった。そしてまた1つ大きな活動実績を残せたが、今回は自分の体力不足や技術不足が垣間見え、メンバーにも大きく助けられまくった。
まだまだ沢登り続けていきたく、その為にはこまめなプレ、肉体改造、ギヤの随時アップグレードが必須であると痛感した。
ともあれ久々に思い出に残る2024年のお盆休みであった。